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2024-08-06 10:00:00

◆就業規則の問題点
 「就業規則を作ったのに実務で使えない」と感じたことはありませんか。例えば、就業規則に定めた解雇事由や懲戒事由に該当するとして行った解雇処分や懲戒処分について、労働者が不服として労働基準監督署に申告をし、又は、裁判になった場合、会社が不利になったり負けたりということが少なくありません。会社としては、「ただ就業規則の記載に沿った処分をしただけなのに」という感想を抱いてしまいます。
 この問題の原因が、就業規則の内容にあることは多いです。現状の日本の労働法制では、法律の表現には抽象的で画一的なものが多く、具体的な考え方や判断基準はこれまでの膨大な量の裁判例が蓄積されたものから成り立っているからです。つまり、就業規則の内容も、法律の文言に沿った表現での記載だけでは足りず、過去の裁判例を踏まえた具体的な内容にしなければ、実際の労務トラブルに対応できなくなってしまうのです。

◆主な原因は2つ
 抽象的な法律表現による就業規則と、裁判例を意識した内容の就業規則との違いは、次の2つの視点が意識されているかいないかに大きな違いがあります。この2点の意識が薄い就業規則に沿って、会社の行為が行われた場合には、会社に不利な結果になることがあります。
 ①解雇権濫用法理
 ②合理的限定解釈
 この2つをごく簡単に説明すると、法律上は会社の権利として認められる行為であっても、裁判所や労働基準監督署から「それはやり過ぎ」と一定の制限がかかることです。例えば「解雇事由」や「懲戒事由」は、原則として会社が自由に定めることができる権利ですが、実際の運用において、「労働者の起こした問題と比較して、その処分は重すぎる」として無効とされることがあります。これは会社が権利を濫用したとしての、解雇権濫用法理にあたります。また、会社が規定した就業規則の内容が広すぎる、例えば、「兼業・副業を全面的に禁止する」との規定について、裁判所が「業務に支障を来たさない範囲での兼業・副業まで禁止すべきでない」と判断することがありますが、これは、会社が定めた「全面禁止」を修正し、「合理的な範囲で解釈すべき」と合理的限定解釈がされたことによります。

2024-07-28 11:00:00

 またしても、ふるさと納税の制度が利用者にとって〝うま味〟の少ないものに変更されます。総務省はふるさと納税制度のルールを見直し、利用者に独自のポイントを付与する仲介サイトを通じた寄付の募集を禁止すると発表しました。「地産品限定」「原価率3割規制」といったルールの変更に加え、今回は寄付集め競争の過熱を是正するための措置として、仲介サイトによる「ポイント付与」が事実上禁止されます。周知期間を経て、2025年10月以降の寄付から適用する方針です。

 ふるさと納税は、仲介役となるポータルサイトを通じて自治体に寄付する利用者が増加しています。大手の仲介サイトでは利用者を呼び込むため、寄付金額に応じて独自のポイントを付与しています。

 総務省では、自治体が仲介サイトの運営事業者に支払う手数料にはポイントの原資も含む場合があるとみており、禁止すれば手数料が下がり、自治体の収入が増えると期待しています。ただし、寄付金をクレジットカード決済で支払った場合にカード会社が付与しているポイントなど、通常の商取引に伴うものは禁止しません。

 自治体が寄付を集めるために独自の取り組みを企画・立案し、実行するのは困難。〝集客力〟のある大手ポータルサイトに依存するのは当然の流れで、これを行政主体のホームページだけでPRしても多くの寄付は集まりません。

 自治体が広報・宣伝活動に多くのノウハウを持つ広告代理店やPR会社、ふるさと納税ポータルサイトを利用するのは当然のことで、これを封じるのであれば純粋な「広告料」「PR費用」といったコストが増えるだけでしょう。そうしないことにはポータルサイト側の運営に支障が生じます。そうなると、配送費や宣伝費も「原価率3割」に含む必要がある現行のルールでは、返礼品の品質や量を落とすしかありません。

 高額納税者の多くが利用するふるさと納税の〝うま味〟が、またもや制度を作った総務省によって減殺されることになりそうです。

<情報提供:エヌピー通信社>

2024-07-22 09:30:00

 新しい資本主義実現会議(議長・岸田文雄首相)は6月に開いた会合で「新しい資本主義実行計画の改訂案」を取りまとめました。首相は会合で、「事業承継税制の要件緩和の検討を図ります」と発言。また「スタートアップ育成5カ年計画の強化とともに、中小・小規模企業の事業承継やM&A・グループ化を進めるため、仲介事業者の手数料の開示や、M&Aの際に経営者保証を見直す枠組みを導入します」と述べました。

 中小企業の事業承継を後押しする税制優遇の特例措置について、現行は2024年末となっている後継者の役員就任期限を25年以降に延長します。承継時の税負担を軽くする事業承継税制では、非上場株などの贈与税や相続税の納付を猶予しています。現行制度で贈与税の優遇を受けるには、24年末までに役員に就任する必要がありました。

 中小企業の非上場株式を取得した後継者の贈与税や相続税の納税を全額猶予する事業承継税制の特例に関しては、首相が「要件を緩和する」方針を示したことで、改訂案に盛り込まれる公算が高くなりました。現行では経営を引き継ぐ際に、その企業の役員就任後「3年以上」を経過している必要がありますが、25年度の税制改正でこの期間を短縮する方針。要件とする役員在任期間をどこまで短縮するかは、自民党税制調査会で検討した上で、年末にかけて行う与党との税制改正協議で決めます。

 会合に出席した委員からは「経営者の意向に沿った事業再生やM&Aの円滑化への支援が欠かせない。銀行の役割も大きく、M&Aの際の既存融資の経営者保証見直しの検討、M&A仲介サービス業務の強化などの施策は重要」、「中小企業やスタートアップにおける事業承継・M&Aを円滑に進めるため、例えば事業承継税制における役員就任要件を恒久的に撤廃するなど、税・財政面での支援を進めてほしい」、「M&Aの阻害要因となっている〝のれん〟の償却を見直す必要がある。実態に合った処理方法を選択できるように、のれん償却を定める日本会計基準の見直しを行うべき」といった意見が出ました。

<情報提供:エヌピー通信社>

2024-07-11 13:30:00

 全世代型社会保障構築会議(主宰・新藤義孝担当大臣)は昨年まとめた「社会保障の改革工程」で、2028年度までに取り組む問題として「医療・介護保険における金融所得・資産の扱い」を挙げ、社会保険料への金融所得の反映についての「あり方」を検討するとしていました。この議論に絡み、SNSでは1月から始まった新NISAの口座も対象になるのではないかといった警戒感が一部で浮上していました。

 厚生労働省では、こうした「金融所得に対する社会保険料〝増税〟」への世論の警戒感を重く見て、その火消しに躍起。厚労省幹部は参院財政金融委員会で、政府が検討する能力に応じた社会保険料負担のあり方に関連し「政府として非課税となっているNISA(少額投資非課税制度)口座内の所得を対象とすることは考えていない」と語りました。「風説では、NISAから社会保険料が取られると言われている」との質問に答弁したもの。

 ただし、政府・自民党では医療・介護保険料を算定するにあたって、株の配当など金融所得を反映させる方向での検討を本格化させていることも事実。その一方では、首相が投資促進を掲げていることとの整合性を懸念する声もあり、調整は難航しています。

 株式・投資信託商品などに投資する場合、証券会社などに開いた口座を「特定口座・源泉徴収あり」にしておくと、所得税(15.315%)と住民税(5%)は源泉徴収されます。取引によって損失が出た場合に「損益通算」をするのならば、確定申告することになります。所得の増減は社会保険料の算出にも影響するため、膨張する一方の高齢者医療費を捻出しなければならない政府・自民党としては、金融所得も保険料に反映させて徴収したいわけです。

 今回、厚労省幹部が「NISA口座内の所得は対象外」と明確に否定しましたが、全世代型社会保障構築会議の「改革工程」には、「マイナンバーを活用して、金融資産の保有状況も勘案し、負担能力を判定する」とあります。将来的に金融所得も〝増税〟のターゲットになるとしたら、新たな節税プランを検討する必要がありそうです。

<情報提供:エヌピー通信社>

2024-07-09 09:15:00

◆所得税の納税者が対象
 所得税の定額減税は、所得税の納税者である合計所得金額1,805万円以下の居住者に適用され、所得税額から本人3万円、同一生計配偶者と扶養親族1人につき3万円が控除される制度です。所得税の納税がない人は定額減税を受けることはできません。

◆非居住者には適用されない
 定額減税は、海外で就職、留学などで国内に住所を持たない者、または1年以上、居所が国外にある者は対象となりません。

◆合計所得金額による扱いの違い
 合計所得金額48万円以下の配偶者は、所得税の納税がないため、同一生計配偶者となることで定額減税を受けられます。給与等の源泉徴収では、合計所得金額の見積額900万円超の同一生計配偶者は、扶養控除等申告書に氏名等が記載されていませんので「源泉徴収に係る申告書」を提出して月次減税を受けます。また、年末調整の際は「配偶者控除等申告書」又は「年末調整に係る申告書」を提出して年調減税を受けます。また、国税庁の様式以外も使用できます。
 同一生計配偶者に該当するかの判定は、原則、令和6年12月31日の現況で行い、年の中途で出国、死亡の場合は、出国日、死亡日で行います。青色事業専従者や白色事業専従者は同一生計配偶者に該当しません。
 また、合計所得金額48万円超となる共働き世帯などの配偶者は、自身が所得税の納税者として定額減税を受けます。

◆住民税は市区町村で計算
 住民税の定額減税は、納税者の所得割額から本人1万円、同一生計配偶者と扶養親族1人につき1万円が控除される制度です。所得割額がない人、均等割り額のみの人は、定額減税を受けることができません。定額減税の手続きは、各市区町村が実施します。
 なお、令和5年度の所得税確定申告では1,000万円超の給与所得者の同一生計配偶者であったため、給与支払報告書等に控除対象配偶者として記載されていない配偶者は、市区町村が令和6年度住民税の定額減税対象者として把握できていないため、令和7年度の住民税から控除を受けます。

◆控除しきれない人には調整給付
 所得税および住民税の定額減税を自身の納税額から控除しきれない人は、各市区町村から調整給付金を受けます。給付額の算定は各市区町村で実施してくれます。
 また、1万円未満の給付は1万円単位に切上げとなりますので、少し、お得です。

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