インフォメーション
◆7年間で3割減少した税理士試験申込者数
毎年8月は、年に一度の税理士試験。今年(第67回)も全国14か所の試験会場で8月8日~10日の日程で実施されました。台風5号の影響もあり、悪天候の中で試験に臨まれた方も多かったはず。受験生のみなさんは本当にお疲れさまでした。
国税審議会公表の今回の受験申込数は4.1万人。他の資格試験同様に、税理士試験も減少傾向にあります。平成23年には約6万人の申込みがありましたので、7年の間に約7割に減少したということになります。
◆働きながら1.4科目受験が一般的受験者像
税理士試験は、よく「働きながら受けることができる資格試験」の代表格といわれています。この試験が「科目選択制度」と「科目合格制度」という特徴を持っているからです。税理士試験は11科目中5科目合格すればよい試験。必ず選択しなければならない「必修科目」(簿記論・財務諸表論)や、どちらかを選択しなければならない「選択必修科目」(法人税法又は所得税法)はありますが、基本的には難易度や勉強量、将来の必要性に応じ、受験のプランニングができます。科目の合格率は10~15%ですが、5科目といってもすべて同時に受験する必要はなく、一度合格した科目に有効期限はありません。そのため、働きながら一科目ずつ確実に合格していけばよいわけです(昨年の平均受験科目数は1.38科目)。病気、転職、子育てや介護などで勉強を中断しても受験を続けることもできます。
今年で67年も実施されているという実績があることから、一科目合格でも、履歴書に書くことができるのは魅力の一つです。
◆HPから読める?若者は長い受験期間を敬遠
このような試験であることから、税理士試験は「受験期間が長くなりがち」という一面をもっています。資格専門学校は「短期合格」を宣伝していますが、国税庁HPの統計を読めば、容易でないことはわかります(机上では、年受験科目数1.38×合格率12%=期待値約0.17。5科目÷0.17=なんと約29年)。10年以上の合格などザラ。これでは若い方に敬遠されてしまいます。
実際、41歳以上の受験生の5年間の統計は1.1万人と横ばいですが、25歳以下の受験生は7.7千人から4.5千人と約4割減(会計科目受験生も4割減です)。最近は若い税理士の先生の中で、大学院に通われた「試験免除組」が増えている気もします。
誠に勝手ながら、弊所では、下記の期間をお休みとさせていただきます。
期間:平成29年8月11日(金)~平成29年8月16日(水)
何卒よろしくお願い申し上げます。
◆29年より登記事項証明書の添付省略
平成29年4月1日より国税庁に提出する届出書について二つの見直しが行われています。一つは、法人設立届出書等に登記事項証明書等の添付が不要となったことです。
これは、平成25年に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」に基づいて、行政組織の壁を越えたデータ活用により、公共サービス向上を図ろうとする「登記・法人設立等関係手続の簡素化・迅速化に向けたアクションプラン」という横断的な取り組みの一つです(法人番号導入もその一環)。
法務省では、他の行政機関とオンラインで情報連携ができるような新しい登記情報システムの運用を平成32年度中に開始する予定です。国税庁はオンラインで提供される登記情報の活用を図るため、関係省庁と議論を進め、平成29年税制改正で次の対象届出書等への登記事項証明書の添付が不要となりました。
1.法人の設立・解散・廃止等の届出書
「法人設立届出書」、「外国普通法人になった旨の届出書」、「収益事業開始届出書」等
2.税務署の求めに応じ添付していたもの
「営業等開始・休止・廃止申告書」(たばこ税法、揮発油税法、印紙税法等)等
◆届出書の提出先のワンストップ化
また、改正前は異動前と異動後の双方の所轄税務署に提出が必要とされていた異動届出書等については、平成29年4月1日以後の納税地の異動等により、以下の対象届出書等を提出する場合、異動後の所轄税務署への提出が不要となりました。
1.所得税
「納税地の変更に関する届出書」、「納税地の異動に関する届出書」、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」、「個人事業の開業・廃業等届出書」
2.法人税
「異動届出書」
3.消費税
「消費税異動届出書」、「納税地の変更に関する届出書」、「納税地の異動に関する届出書」
◆地方税は従前通りの取扱いのため要注意!
これらの取扱いは現行では国税のみで、地方税の届出書については登記事項証明書の添付や提出先は従前どおりですので、ご注意ください。
◆29年路線価は前年比0.4%増
平成29年路線価が公表されました。全国の路線価の平均は前年比0.4%増。一昨年までは7年連続の下落傾向でしたが、2年連続の上昇となりました。これは3月公表の公示地価と同じです。以前は路線価と公示地価の前年対比率の取り方が異なっていましたが、現在は両者とも「地点ごとの変動率」を単純平均しており大差はありません。
地価公示は「土地の取引価格の指標を与えること」を目的としており、全国で約26,000地点の公示地価を3月に公表しています。一方、路線価は相続税・贈与税の課税価格として用いられるもので、計算の基礎となる調査地点(標準宅地)が約333,000地点です。こちらは件数も多いため、公表は7月となっています。なお、路線価の価格は公示地価の8割程度の評価となります。
◆鳩居堂前の路線価は過去最高額を更新
29年の路線価が前年より上昇した都道府県数は13(宮城県の3.7%増が最高)。下落は32でした(秋田の2.7%減で4年連続最下位)。ただ、下落した県のうち26は下げ幅が縮小したため、全体では上昇局面とはいえます。また、路線価の最高額は、例年どおり銀座の鳩居堂前でしたが、これに加えて「銀座プレイス前」などの4か所も1㎡当たり4,032万円で、バブル期の3,650万円を抜き過去最高とのことです。ちなみに、公示地価の29年の最高額は、同じ銀座の山野楽器本社の5,050万円です(鳩居堂前は公示地価の調査対象ではありません)。
◎過去3年間の鳩居堂前の路線価・前年比
平成27年分:26,960,000円(+14.2%)
平成28年分:32,000,000円(+18.7%)
平成29年分:40,320,000円(+26.0%)
◆上昇傾向はどこまで続くのか…
公示地価は土地の用途別で変動率が公表されており、29年は商業地が2年連続の「上昇」、住宅地は「下落から横ばい」へ、工業地は「横ばいから上昇」に転じています。
これらをあわせて考えると、オリンピック開催で都市部の地価上昇は急激な一方で、住宅需要も団塊ジュニア世代が住宅購入年齢に当たる現在は、 低金利や税制にも支えられ底堅い感じもしますが、先行指標である中古マンションの指標が鈍化していることや、生産緑地指定から30年経過する平成34年には都市圏に土地が過剰供給される懸念も囁かれていますので、オリンピック後の状況はかなり変わるものと予想されます。