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現行法では、生命保険契約の契約者の名義を変更しただけでは、新たに契約者になった者に対する贈与の課税はありません。
具体的には、「甲」契約者でかつ保険料負担者、「乙」被保険者、「丙」保険金受取人の場合で、その後、甲から丙に契約者の名義を変更し、丙が保険料を負担することになったとしても、名義変更時までに、甲が負担していた保険料相当額については、丙への贈与にはならないということです。
◆名義変更後の課税の取扱いと問題点
上記例において、①丙への名義変更後、甲死亡前に保険の満期を迎えると、当該満期保険金は丙が受け取ります。この場合の丙の課税は、丙自身が負担した保険料相当額に対応する保険金部分は一時所得としての課税を受け、甲が負担した保険料相当額に対応する保険金は甲から贈与により取得したものとして贈与税の課税を受けます。
また、②名義変更後、甲の死亡前に被保険者乙が死亡すると、当該死亡保険金は丙が受取ります。この場合の丙の課税は、死亡保険金の内、丙が負担した保険料相当額に対応する保険金は一時所得としての課税を受け、甲が負担した保険料相当額に対応する保険金は甲から贈与により取得したものとして、贈与税の課税を受けます。
なお、③名義変更(甲から丙)が甲の死亡によってなされた場合には、丙は生命保険契約に関する権利を相続等により取得したことになり、甲の本来の相続財産として相続税の課税対象になります。
以上が保険契約の名義変更に関する課税の取扱いです。しかし、実際の申告では、名義変更に関する資料が十分に整備されていないこともあってか、受取保険金のすべてが一時所得として申告されていた等、法が予定していた申告が行われていない事例が散見されたようです。
◆平成30年1月1日以後の取扱い
現行法では、保険会社から税務署に提出される情報(支払調書)には、名義変更に関する情報、元の契約者の払込保険料に関する情報はありません。
そこで、平成27年度の税制改正で平成30年1月1日以後、保険金等の支払があった場合、または契約者が死亡し名義変更があった場合には、保険会社は上記情報を税務署に提出することを義務付けられました。
今一度、保険関係の書類を確認し、今後の対応を考えてはどうかと思います。
◆給与の源泉税もクレジットカード払い
平成29年6月12日(月)から、e-Tax(国税電子申告・納税システム)から「国税クレジットカードお支払サイト」へのアクセスが可能となりました。源泉所得税の申告・納付は、銀行に出向いて窓口で納付するよりも、インターネットバンキングで納付する方が楽ですので、税理士自身e-Taxを使い、関与先にも利用を勧めている方も多いでしょう。6月下旬に源泉税の納付の際に、いつもと画面が違い、「あぁ、クレジットカード納付がいよいよ始まったのだな」と気づかれたかもしれません。
◆クレジットカード払いの利便点
出張の際の新幹線や航空券の購入、ホテルの宿泊代の支払いはもちろん、毎月の電気、ガス、電話代にいたるまでクレジットカード払いができるようになっています。
クレジットカードの請求書に添付される「ご利用明細書」等は、①その書類の作成者の氏名又は名称、②課税資産の譲渡等を行った年月日、③課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容、④課税資産の譲渡等の対価の額、⑤その書類の交付を受ける者の氏名又は名称が記載されていることが一般的ですので、消費税法第30条第9項に規定する請求書等に該当することになります。その意味で、会計帳簿の記帳の観点からも、クレジットカード払いには利便性があると言えます。
◆経理の本音(会社の電話代等一部のものの支払いにクレジットカードは使わないで!)
このように利便性の高いクレジットカード利用ですが、経理担当の目から見ると(=経理をチェックする税理士もしかり)、支払に充ててほしくない使途先があります。具体的にいうと、電話代などの実際の利用に比べて支払いが2か月近く遅れる支払です。
電話代の請求は、通常利用月の翌月に請求書が発行され、口座振替の場合は翌月末日等、大体はひと月遅れで精算されます。これがクレジットカード払いとなると、約ふた月遅れとなり、決算確定の最終金額の数字確認が遅れる場合もままあります。
利用によるポイントが付いたり、資金の後払いとなったりと、お得感の大きいクレジットカード払いですが、実際の運用に際しては、経理担当者等の意見も聞いて、会社全体として賢く使ってほしいものです。
そう言い忘れていました、国税のクレジットカード払いは、このシステムの受託業者への手数料が発生しますので、お得感はその分目減りします。
◆7年間で3割減少した税理士試験申込者数
毎年8月は、年に一度の税理士試験。今年(第67回)も全国14か所の試験会場で8月8日~10日の日程で実施されました。台風5号の影響もあり、悪天候の中で試験に臨まれた方も多かったはず。受験生のみなさんは本当にお疲れさまでした。
国税審議会公表の今回の受験申込数は4.1万人。他の資格試験同様に、税理士試験も減少傾向にあります。平成23年には約6万人の申込みがありましたので、7年の間に約7割に減少したということになります。
◆働きながら1.4科目受験が一般的受験者像
税理士試験は、よく「働きながら受けることができる資格試験」の代表格といわれています。この試験が「科目選択制度」と「科目合格制度」という特徴を持っているからです。税理士試験は11科目中5科目合格すればよい試験。必ず選択しなければならない「必修科目」(簿記論・財務諸表論)や、どちらかを選択しなければならない「選択必修科目」(法人税法又は所得税法)はありますが、基本的には難易度や勉強量、将来の必要性に応じ、受験のプランニングができます。科目の合格率は10~15%ですが、5科目といってもすべて同時に受験する必要はなく、一度合格した科目に有効期限はありません。そのため、働きながら一科目ずつ確実に合格していけばよいわけです(昨年の平均受験科目数は1.38科目)。病気、転職、子育てや介護などで勉強を中断しても受験を続けることもできます。
今年で67年も実施されているという実績があることから、一科目合格でも、履歴書に書くことができるのは魅力の一つです。
◆HPから読める?若者は長い受験期間を敬遠
このような試験であることから、税理士試験は「受験期間が長くなりがち」という一面をもっています。資格専門学校は「短期合格」を宣伝していますが、国税庁HPの統計を読めば、容易でないことはわかります(机上では、年受験科目数1.38×合格率12%=期待値約0.17。5科目÷0.17=なんと約29年)。10年以上の合格などザラ。これでは若い方に敬遠されてしまいます。
実際、41歳以上の受験生の5年間の統計は1.1万人と横ばいですが、25歳以下の受験生は7.7千人から4.5千人と約4割減(会計科目受験生も4割減です)。最近は若い税理士の先生の中で、大学院に通われた「試験免除組」が増えている気もします。
誠に勝手ながら、弊所では、下記の期間をお休みとさせていただきます。
期間:平成29年8月11日(金)~平成29年8月16日(水)
何卒よろしくお願い申し上げます。
◆29年より登記事項証明書の添付省略
平成29年4月1日より国税庁に提出する届出書について二つの見直しが行われています。一つは、法人設立届出書等に登記事項証明書等の添付が不要となったことです。
これは、平成25年に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」に基づいて、行政組織の壁を越えたデータ活用により、公共サービス向上を図ろうとする「登記・法人設立等関係手続の簡素化・迅速化に向けたアクションプラン」という横断的な取り組みの一つです(法人番号導入もその一環)。
法務省では、他の行政機関とオンラインで情報連携ができるような新しい登記情報システムの運用を平成32年度中に開始する予定です。国税庁はオンラインで提供される登記情報の活用を図るため、関係省庁と議論を進め、平成29年税制改正で次の対象届出書等への登記事項証明書の添付が不要となりました。
1.法人の設立・解散・廃止等の届出書
「法人設立届出書」、「外国普通法人になった旨の届出書」、「収益事業開始届出書」等
2.税務署の求めに応じ添付していたもの
「営業等開始・休止・廃止申告書」(たばこ税法、揮発油税法、印紙税法等)等
◆届出書の提出先のワンストップ化
また、改正前は異動前と異動後の双方の所轄税務署に提出が必要とされていた異動届出書等については、平成29年4月1日以後の納税地の異動等により、以下の対象届出書等を提出する場合、異動後の所轄税務署への提出が不要となりました。
1.所得税
「納税地の変更に関する届出書」、「納税地の異動に関する届出書」、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」、「個人事業の開業・廃業等届出書」
2.法人税
「異動届出書」
3.消費税
「消費税異動届出書」、「納税地の変更に関する届出書」、「納税地の異動に関する届出書」
◆地方税は従前通りの取扱いのため要注意!
これらの取扱いは現行では国税のみで、地方税の届出書については登記事項証明書の添付や提出先は従前どおりですので、ご注意ください。